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第七章

形

六月の、雨の夜だった。

壁の地図を眺めていた。

青い丸を結んだ線。

何かに似ている。

その「何か」が、三週間、わからなかった。


その夜、なぜか聖書ではなく、星座の本を開いた。

キャンプを始めた頃に買った本だった。

奥多摩の夜空で星を覚えようと思って、結局あまり使わなかった本。

ページをめくった。

オリオン座のページで、手が止まった。

三つ星。

ベルトを形成する、三つの星。

エマは本を持ったまま、壁の地図を見た。

青い丸を見た。

立ち上がった。

地図に近づいた。

顔が、紙につきそうなほど近づいた。

違う。

引いて見た。

もっと引いて見た。

部屋の端まで下がった。

あ。

声が出なかった。

息が、止まった。

青い丸を結んだ線は、星座だった。

オリオンではなかった。

もっと古い。

メソポタミアの星図で、川沿いに描かれた、古代の星座だった。

攻撃された遺跡の場所が、その星座と、完全に一致していた。


手が震えた。

星座の本を落とした。

拾わなかった。

スマートフォンで調べた。

その星座の名前を調べた。

古代バビロニアの文献に出てくる星座だった。

意味を調べた。

「天の門」


エマはその場に座り込んだ。

床に座って、壁の地図を見上げた。

副次的な被害ではなかった。

標的ではない、は嘘だった。

遺跡は、正確に、意図的に、選ばれていた。

星座の形に沿って。

天の門を、地上に描くように。


なぜ。

誰が。

何のために。


透のブログの一文が、頭の中で鳴った。

「時が来たら、山へ行け」

時が来たら。

時が、来ている。

透はこれを知っていたのか。

だから消えたのか。

だから行ったのか。


エマは床から立ち上がった。

壁の右側と左側を見た。

イランと、透。

二本の糸が、今、一本になった。

透を見つけなければならない。

趣味の調査ではなかった。

もう、そういうことではなかった。


窓の外で、雨が強くなった。

エマは壁の地図を写真に撮った。

インスタではなく、ノートのアプリに保存した。

それから透のブログを開いた。

十二本の記事を、もう一度最初から読み始めた。

今度は、違う目で読んだ。

暗号を読むように。