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第2章

喫茶店

19歳の頃、バイトをしていた喫茶店があった。

カウンターだけの、小さな店だった。

マスターが好きなオールドカーが、週替わりで店内に展示してあった。

フェラーリ Dino。アルファロメオ ジュリエッタ。ポルシェ 356。

車が好きな人間が、黙って集まってくる店だった。

百合はカウンターの中でコーヒーを淹れた。客は車の話しかしなかった。値踏みしなかった。派閥がなかった。ただ、ボディデザインやエンジン音の話をした。

居心地がよかった。

ある日、客の一人に声をかけられた。モデルか女優をやってみないかと言われた。百合は3秒考えた。

いいですよ。

そう答えた。

なりたかったわけではなかった。ただ、そういう気がしただけだった。

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