オーディションは、受かった。
端役だった。テレビに出た。雑誌に出た。でも主役にはなれなかった。
現場には悪意があった。見えないところで、何かが飛んでいた。百合はほとんど気づかなかった。めでたい勘違いをして、にこにこしていた。
でも時々、ひどく傷ついていた。なぜ傷ついたか、自分でもわからなかった。気づいていないはずなのに、体が知っていた。
疲れた。
ある日、気づいた。
そもそも、私は、なんでここにいるんだろう。
大好きな車の飾ってある喫茶店でバイトをしていただけだった。芸能人になりたかったわけじゃなかった。
もう、辞めようかな。
23歳の春だった。