翌年の冬、電気料金の明細が届いた。
去年の冬より、少し安かった。
フィルター掃除のおかげか、設定温度を一度下げたからか、それとも、家にいる時間の使い方が変わったからか。
理由は、はっきりわからなかった。
でも蓮には、一つ、わかったことがあった。
会社での自分が、去年より少し穏やかになった。
部下は前よりよく、蓮に話しかけるようになった。
妻は「最近怒らなくなったね」と言った。
蓮は、否定も肯定もしなかった。
ただ、温かいほうじ茶を一口飲んで、こう言った。
「涼しくしている方が、安いんだよ。それに、たぶん最初から、ちゃんと足りてたんだと思う」
妻は首をかしげた。
蓮は説明しなかった。
説明しなくても、いつか、伝わる気がした。
窓の外は、冷たく晴れていた。
部屋の中は、ほどなく、ちょうどよく暖かかった。
完