玄さんは、もういない。
教室の名簿に「未収金」とだけ書かれて残っていたはずの名前も、もうどこにも残っていない。
国の借金は返さなくていい、と笑っていた男。泥棒から盗んで何が悪い、と言った男。権力の柵の中を、雇われもせずに平気で出入りしていた男。10年先の景色をいつも見ていて、ある日ふっと、いなくなってしまった男。
私は、その男の記録係になり損ねた、ただの生徒だった。それでも、彼が遺したものだけは、ちゃんと覚えている。
第七章
玄さんは、もういない。
教室の名簿に「未収金」とだけ書かれて残っていたはずの名前も、もうどこにも残っていない。
国の借金は返さなくていい、と笑っていた男。泥棒から盗んで何が悪い、と言った男。権力の柵の中を、雇われもせずに平気で出入りしていた男。10年先の景色をいつも見ていて、ある日ふっと、いなくなってしまった男。
私は、その男の記録係になり損ねた、ただの生徒だった。それでも、彼が遺したものだけは、ちゃんと覚えている。