森田文香、31歳。
広告代理店で、企画の仕事をしている。「時間がない」が口癖だった。朝も昼も夜も、いつも何かに追われていた。
日曜の夜、スマホが震えた。
今週のスクリーンタイムレポートです。
いつもなら、通知だけ見て消していた。その日はなんとなく、開いてみた。
週42時間12分。
一日平均、6時間。
内訳が並んでいた。SNS、動画、メッセージアプリ。仕事のチャットも入っているはずなのに、それを差し引いても、驚くほどの数字だった。
時間がない、って毎日言ってたのに。
文香はソファに座ったまま、しばらく画面を見ていた。
母親から、何度もLINEが来ていた。既読だけつけて返信していなかった。
人間ドックの案内も、机の引き出しに入れたままだった。半年前から。
時間、あったんじゃん。
なぜか、その事実が、少し怖かった。