その週の金曜日、誠は久しぶりに通帳記入に行った。
最近はアプリで見られるので、通帳を持ち歩く習慣はとうになくなっていた。 でも、なぜだか無性に、紙に印字されたものを見たいと思った。 理由はわからない。
ATMが通帳を吸い込み、耳障りな音を立てて何行かを印字して、吐き出した。
最終行に、八桁の数字があった。
誠はそれを、駐車場の車の中で、しばらく眺めた。
誠にとって、それは自分の全財産だった。 というより、そう考えたことすらなかった。 財産かどうかを疑う発想自体、そもそもなかった。
通帳の後ろのほうに、細かい字のページがある。 誠は十七年間、一度も読んだことがなかった。