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第一章

明細

高橋蓮、32歳。

営業三課のリーダーをしている。声が大きい。熱いと言われる。褒め言葉のつもりで言われているのは知っているが、蓮自身は最近、それがあまり嬉しくなかった。

日曜の朝、キッチンのテーブルに電気料金の明細を並べた。

去年の夏分と、去年の冬分。

なんとなく、比べてみたくなった。

エアコンは一年中、ほぼつけっぱなしだ。 夏は冷房、冬は暖房。設定温度も、常に快適温度を保っている。

夏、月の電気代、約18,000円。

冬、月の電気代、約26,000円。

同じように「つけっぱなし」なのに、8,000円も違う。

なんでだ?

温める方が、電気を使う。

なんとなく、そんな気はしていた。改めて数字で見ると、思っていたよりも差が大きかった。

蓮はコーヒーを飲んだ。缶コーヒーだ。温かいやつ。夏でも冬でも、蓮はいつも温かい缶コーヒーを買う。

そのことに、今日はなぜか少し引っかかった。


月曜の昼休み。

社員食堂の隅で、蓮は缶コーヒーを飲んでいた。

向かいに、宮本涼子が座った。

同じ営業三課の先輩。蓮より三つ上。声を荒げているところを一度も見たことがない。

夏でも冬でも、涼子は水筒に入れた麦茶を飲んでいる。冷たいまま。

「高橋くん、なんか難しい顔してるね?」

「電気代の明細、見てたんですよ」

「珍しいね、そんなの気にするの」

「冬の方が、夏よりずっと高いんです。どちらもほぼ半年間、24時間稼働で、条件は一緒なのに…」

涼子は水筒の蓋を開けながら、少しだけ笑った。

「知ってた」

「知ってたんですか」

「うん」

蓮は缶コーヒーを一口飲んだ。

「なんでですか」

涼子は麦茶を飲んだ。冷たいまま。

「それ、明日話そうか?」

「今日じゃダメなんですか?」

「今日は時間ない」

嘘だとすぐにわかった。涼子はいつも、この時間は暇そうにしている。


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