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第二章

仕事の量

火曜。

蓮は社食で、涼子の姿を探した。いつもの席にいた。

「昨日の続き、聞いてもいいですか」

「聞く気になったんだ」

「気になって眠れなかったんですよ」

涼子は少し笑って、麦茶を飲んだ。

「高橋くん、エアコンって何してると思う?」

「温度を、変えてる」

「違う」

「え」

「熱を、運んでるの。作ってるんじゃなくて」

蓮は缶コーヒーを持ったまま、動きを止めた。

「夏の冷房はね、部屋の中の熱を、外に運び出してるだけ。作ってるわけじゃない。ただの引っ越し」

「冬は」

「冬の暖房も、本当は同じ。外の熱を、部屋の中に運び入れてる。エアコンって、電気で"熱を作る"んじゃなくて、"熱を運ぶ"機械なんだよ」

「でも冬の方が電気代高いですよね。運んでるだけなら、同じじゃないんですか」

涼子は水筒を机に置いた。

「運ぶ距離が違う」

「距離?」

「冬の外は、寒い。0度とか、それより下のときもある。でも、部屋の中は24度にしたい。その差を、全部エアコンが埋めてる」

蓮は頷いた。

「夏は、外が35度、部屋を24度にしたいとする。差は11度。冬は、外が0度、部屋を24度にしたいとする。差は24度」

「差が、倍以上」

「差が大きいほど、運ぶのに力がいる。しかも」

涼子は少し声を落とした。

「外が寒すぎると、そもそも運べる熱そのものが少なくなる。空気の中に、運べるだけの熱があんまり残ってないから」

蓮はコーヒーを飲んだ。もう半分ぬるくなっていた。

「じゃあ、冬の暖房って、坂道を登るみたいなものですか」

涼子は少し驚いた顔をした。

「よい例え」

「褒められたの、初めてです」

涼子は笑った。


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