← 玉城玄という男 目次

第二章

IQ145

「国の借金は返さなくていい」

平然と、玄さんはそう言った。意味がわからず聞き返すと、借金というものがどうやってできているか、貸している側も最初から存在しないお金をまた貸ししているだけだということを、楽しそうに話してくれた。当時の私は、半分も理解できなかった。

後になって知ったことだけど、玄さんのIQは145あったらしい。私もそれなりに頭が回る方だと思っていたが、彼の見ている景色には、いつも一歩、二歩届かなかった。

琉球大学を出ていて、英語もペラペラで、米軍基地の中にも顔がきく。なのに暮らしぶりはひどく貧しかった。畑には、誰も食べない「クワズイモ」ばかり植えていた。

「葉っぱが、内地の生け花の人たちに高く売れるんだよ」

近所の人には、馬鹿じゃないかと笑われていたらしい。嘉手納にいた知り合いの空軍兵からアメリカ価格で安く仕入れたバイアグラを、日本人に売る商売もしていた。「これは本業じゃないけどね」と、悪びれもせず言っていた。

何が本業なのか、最後まではっきりとはわからなかった。

↑ 目次に戻る