← ヴォイニッチの種 目次

第四章

作られた命

中世ヨーロッパのある時代に、孤児が異常な数で存在したという記録がある。

 歴史家たちはそれを、戦争や疫病の影響だと説明する。 親が死んで、孤児が増えた。 合理的な説明だ。

 でも幸は、別のことを考えた。

 戦争や疫病で親が死ぬなら、子供も同じ割合で死ぬはずだ。 大人が大量に死んだなら、子供も大量に死んでいるはずだ。 なぜ、子供だけが大量に「残る」のか。

 親がいないのに、子供が存在する。

 これは——最初から、親がいなかったのではないか。

 女のまたから生まれたのではない子供たちが、突然、大量に「出現」した。

 誰かが、作ったのではないか。


 人間を作ることが、できるのだろうか。

 現代の科学では、試験管の中で受精卵を作ることができる。 クローン技術がある。 遺伝子を編集する技術がある。 人間の体は、突き詰めれば、地球にある化学物質の集合体だ。 必要な材料が揃えば、理論的には、作ることができる。

 現代でそれができるなら、はるか昔に同じことができた存在がいたとしても、不思議ではない。

 ただし、その存在は地球の人間ではなかった。

 地球の人間が当時持っていた技術では、到底できないことだ。

 では誰がやったのか。

 ヴォイニッチ手稿に、その答えが書かれているとしたら。

 異次元から——あるいは宇宙の別の場所から——この地球に来た存在が持ち込んだ製造マニュアルに従って、人間が作られたとしたら。

 そのマニュアルが、植物の図として描かれているとしたら。

 なぜ植物の図なのか、それも説明がつく。

 植物の成長原理と、生命の製造原理は、同じだからだ。 またから命を生み、脇から実を結ぶ。 その原理で、人間という生き物を作ることができる。

 作った場所は?どこ?