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第四章

由美

その夜、誠は由美に話した。

 由美は洗い物の手を止めずに聞いていたが、途中で水を止めた。

「じゃあ何、うちのお金は、うちのお金じゃないってこと」

「そういうことになる」

「でも引き出せるでしょ」

「引き出せる。銀行が潰れなければ。」

「じゃあ、問題ないじゃない」

 誠は、何も言えなかった。 たぶん、明日も明後日もATMは動くし、来月の給料も振り込まれる。  なのに、誠には、何かが決定的に違って見えていた。

 由美が手を拭きながら言った。

「あなた、最近そういうのばっかりね」

「そうかな」

「税金のときもそうだった。分かったところで、どうにもならないじゃない」

 誠は反論しなかった。

 ただ、風呂に入りながら、ずっと同じことを考えていた。

 どうにもならないから知らなくていい、というのは、たぶん違う。 知らないまま、どうにかなっていると思い込んでいるのが、いちばん危ないのではないか?

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