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第七章

彩香

家に帰ると、娘の彩香がリビングでスマートフォンを見ていた。 高校二年生になっていた。

「お父さん、遅い」

「ちょっと銀行に行ってた」

「ふうん」

 彩香は顔を上げなかった。 誠はソファに座って、少しの間、娘の横顔を見ていた。

 この子が大学を出るころ、この仕組みはまだ存在しているのだろうか。 たぶん、していると思う。

「彩香」

「なに」

「お金って、どこから来ると思う」

 彩香は面倒くさそうに顔を上げた。

「働いたら来るでしょ」

「うん。それは分かる。でも、その来たお金は、その前はどこにあった」

 彩香は少し考えて、それから言った。

「……会社?」

「会社の前は」

「知らない。銀行じゃないの」

「銀行の前は」

 彩香は黙った。 それから、嫌そうな顔をした。

「なんか変だよ、お父さん」

 誠は笑った。

 変なのは自分ではない、と言いたかったが、やめておいた。

きっと、自分で気づく日が来る。 ただ、驚くだろう。 だから、なるべく早く気づいてほしい。

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