翌週。
蓮は毎朝、5分間だけ、座って目を閉じるようになった。座禅というほどではない。ただ、座って、呼吸を数えるだけ。
最初は落ち着かなかった。頭の中で、色々な雑音が駆け巡っていた。
3日目あたりから、頭の中が、少しだけ静かになったような気がした。
昼休み。
「涼子さん、ひとつ、質問いいですか?」
「なに」
「熱を作る人は、悪い人なんですか。俺、今まで、怒りで部下を動かしてきたところもあったかな?って思うんです」
涼子は麦茶を飲んだ。少し考えてから言った。
「悪くない。ただ、コスパが悪い。作った熱は、いつか自分の中から消えていく。運んだ熱は、外にあったものを動かしただけだから、自分は減らない」
「運ぶ人って、具体的にはどうすればいいんですか」
「相手の中に、既にある熱を見つけること。部下だって、やる気とか、焦りとか、何かしら持ってる。ゼロから怒りをぶつけて動かすんじゃなくて、その子の中にあるものを、少しだけこっちに向ける」
蓮は麦茶を飲んだ。
「難しそうです」
「難しいよ。だから、みんな簡単な方、作る方を選ぶ」