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第三章

言葉を渡す手

第三章「言葉を渡す手」

「朕に、ひとつだけ、教えてくれ」と仁徳天皇は言った。

「はい」

「汝は——それを、知りながら、なぜ、黙っているのか」

颯太の中で、何かが、揺れた。

「言えば——終わるからです」と颯太は言った。 「『陰謀論者』という、レッテルを貼られます。 そうなれば、もう、誰も、俺の言葉を、聞かなくなる」

「ならば、なぜ、調べ続ける」

「言える形を、探しているからです」

仁徳天皇は、しばらく颯太を見ていた。

「朕は」と仁徳天皇は言った。 「民に向かって、税を免除すると、布告したわけではない」

颯太は、顔を上げた。

「ただ、高き丘から、見ていただけだ。竈の煙が、上がっているか、いないか。それだけを、見ていた。そして、見たことに従って、動いた」

「言葉ではなく」と颯太は言った。

「行いだ」と仁徳天皇は言った。 「汝も、すべてを、声高に語る必要は、ないのではないか。ただ——汝が、見たものを、見た通りに、誰かに渡せばよい。渡す相手が、ひとりでもいれば——それは、もう、止まってはいない」

颯太の脳裏に、麻衣の顔が浮かんだ。

月に1度、すべてを話している、あの部屋。

「俺には」と颯太は、ゆっくりと言った。 「渡す相手が、います」

仁徳天皇は、わずかに、頷いたように見えた。

「いま、しばし——この地を、歩いてみたい」と仁徳天皇は言った。

颯太は、戸惑った。

「叶うならば、案内せよ」


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