動画は、いつもより、伸びなかった。
再生回数は、いつもの半分にも、満たなかった。
颯太は、それを見て、少しだけ、笑った。 予想通りだった。 派手な数字や、断定的な結論がない動画は、伸びない。 それでいい、と颯太は思っていた。
数日後、コメント欄に、いくつかの書き込みが、現れ始めた。
短いコメントが、並んでいた。
「結論を言わないの、珍しいですね」 「歴史の話なのに、今のニュースみたいに聞こえた」 「煙が見えているか、自分に聞いてみた」
その中に、長いコメントが、ひとつ、あった。
「緊急事態条項のニュース、正直、よく分からなくて、怖いとしか思っていませんでした。でも、この動画を見て——怖いか怖くないかじゃなくて、自分で考えなきゃいけないことなんだと、初めて思いました。賛成か反対かは、まだ決められません。でも、ちゃんと、考えてみようと思います」
颯太は、そのコメントを、何度も、読み返した。
麻衣に、スクリーンショットを、送った。
返事が、ひと言だけ来た。
「渡った」
颯太は、しばらく、画面を、見つめていた。
窓の外の夜景が、いつもと、同じように、光っていた。
けれど——その光のどこかに、今、ひとり、自分で考え始めた人が、いる。
颯太には、それで、じゅうぶんだった。
